振袖ブログ
「私の振袖を娘に着せたいのだけど、このまま着せるのはどうなのかしら?」
やはり今回最も多かったのはママ振りの相談。
来場者の4分の1の方がママ振り相談でした。
そのうちの2件をピックアップしてご紹介致します。
こちらのお客様は「なるべくお着物にお金をかけたくない」と言って、親子で見積もりを作りにいらっしゃいました。
風呂敷に包まれたお着物を拝見すると、それはそれは美しい金通しの生地に、ふんだんに金彩加工と刺繍の施された豪華な振袖でした!
お母様にお話しを伺うと、半世紀近く譲り受け継がれてきた歴史あるお着物とのことで、私も驚きでした。
長い歴史を持つにもかかわらず、表地は比較的綺麗な状態でしたが、裏地が黄ばみを通り越してオレンジ色に変色してしまっていました。
また、経年劣化で絹糸が非常に弱っており、よく見ると掛け衿の部分の糸がボロボロに崩れていました。
これを受けて、我々はお着物とお客様にとってのベストなお手入れと、間に合わせの最低限のお直しの2パターンのお見積もりを致しました。
すると親子一致でベストのお手入れを選択。
内容は、洗い張りと裏地交換です。
掛け衿が外れる程に縫い糸が弱っていたということは、当然ながら他の部分も弱っているということ。
着ているうちに着物が解れてしまうことほど怖いことはありません。
「あまりオススメできないけれど…」と、部分直しという案も一応は出しましたが、他部分が解れてくるリスクを考えて洗い張りにしました。
更に、いくら着てしまえば見えないからと言えど、裏地が変色してしまっているものを着るのは気が引けます…
「せっかく洗い張りをするのだから裏地も新品に換えて、寸法もお嬢様にピッタリサイズにお直ししましょうか?表地はキレイなので、とても綺麗になりますよ」
と悉皆の先生からの提案があると、「どうせ解くなら、やってもらおう!」とのお返事を頂きました。
小物も再コーディネートして、今風の色味の配色と、お嬢様のご希望イメージである「シンプルにまとめて」のコンセプトを実現。
記念にコーディネートを写真に撮ったときにはとってもいい笑顔を見せてくれました!!
この方のみならず、だいたいの方が数パターンのお手入れ方法をご提案すると洗い張りをご希望されます。
なぜなら、縫い糸が弱っているリスクを解消することができる他、寸法を部分的に細かく直していくよりも一度解いた方が費用がお得だからです。
寸法が2ヶ所以上合わなかったり、裏地の汚れが目立つ場合は、洗い張りが得策であると言えるでしょう。
もう1件ご紹介させていただきます。
お次のお客様は、母から姉、姉から妹へと振袖を受け継がれたご家族様。
あらかじめ、お母様からは「帯を新しくしてあげたい」「お姉ちゃんにお金をそんなにかけなかったから、同じくらいにしてあげたい」というご依頼を頂いていたので、それに準じてご提案をすることにしました。
お姉様はお母様と体格が同じということを伺いながら、お持ちいただいた振袖をご本人様に試着していただくと…
なんとお母様、お姉様、今回ご成人を迎えられるご本人様と寸法ぴったり同じでした!!
(私も母と寸法が同じですが、親子3人というのは驚きです…!!)
お姉様のときに行き洗いとシミ抜きで綺麗に洗ってあるうえ、当店の無酸素パック加工で酸化防止保管をされていたためお生地自体もキレイ!!
着るのに文句なしの状態かな?と思いましたが、ここで冷静に考えて気になるところが。
それは縫い糸の劣化です。
特にお着付けの際に強く引く可能性のある袖付の解れや糸の劣化が心配でした。
よく拝見すると、やはり袖付けの絹糸の劣化があり、緩んでいました。
実際に前年の前撮り会で同じ状態の振袖をそのまま着たからの袖付が解れてしまったお話などをして、袖付直しのご了解をいただきました。
その後、お姉様との違いを出すために、小物と帯をご本人様の顔映りのより綺麗な色で再コーディネート。
帯は白地のキレイめデザインのものからシャンパンゴールドベースの可愛らしいデザインのものへ。
小物もマカロンカラーから少し強めの差し色へチェンジ。
同じお振袖なのに全く違う雰囲気になり、お母様もご本人様も喜んでくださいました。
このように、10枚あれば10枚あるだけの着物にベストなお直しのご提案があります。
それは、素人目に見てもわからない繊細なところでもあるので、ママ振りを考えていらっしゃる方にはぜひお近く着物屋で振袖の状態を診断していただきたいです。
特に、今回のお手入れ相談会のような悉皆のプロが店舗まで来ているときが私のオススメです!!
次回のお手入れ相談会は年明けて2019年1月18日金曜日から20日日曜日までの3日間です。
早くも今回いらっしゃることが叶わなかったお客様からのご予約を多数頂いておりますので、お気軽にお問い合わせください。
土浦店 あいざわ